二次元ゲル電気泳動法(2D-DIGE)による化合物の標的蛋白質同定法


(図1)様々な薬剤で処理した細胞のライセートを2D-DIGEで分析して、
そのデーターをカタログ化する。作用機作未知の薬剤で処理した
細胞ライセートをカタログデーターと比較することにより、作用機作を
推定することが可能である。

農薬(抗菌剤、殺虫剤、除草剤)の候補化合物が、目的としている病原体にのみ作用する場合は、優れた選択毒性を発揮するが、宿主細胞にも作用する場合は問題である。例えば、農薬候補化合物が、ヒト細胞株の増殖を阻害することがあると、副作用の点から問題になる。副作用の予知システムとして、すでに我々が開発した小分子標的解析システムが利用可能である。このシステムは、二次元ゲル電気泳動法(2D-DIGE)を用いたプロテオーム解析であり、小分子の標的を推定することができる。すなわち、薬剤で処理したがん細胞では、薬剤の作用機作に応じて、細胞内の様々な蛋白質に増減が見られるが、薬剤の化学構造が異なっても、薬剤の標的分子が同一であれば、2D-DIGEに現われる蛋白質のパターンは極めて類似する。我々は、様々な作用機作を有する化合物でがん細胞を処理して、その2D-DIGEに現われる蛋白質パターンをカタログ化した(図1)。


(図2)HeLa細胞にICRF-193、VP-16を添加して
1時間後にヒストンH2AX (Ser139)のリン酸化を観察。
VP-16は、Topo 毒なので2本鎖DNAの切断を誘導する
(リン酸化陽性)が、活性阻害剤VP-16で処理した
細胞ではリン酸化は観察されない。

作用機作が未解明の新たな化合物について、その蛋白質の増減パターンを既知の薬剤と比較することで、標的分子を予測することが可能である 。具体例として、二つのDNAトポイソメラーゼII(TopoII)阻害剤ICRF-193とVP-16を例にして説明する。この二つの化合物は、標的酵素が同一なので、2D-DIGE蛋白質変動パターンは類似しているものと予想していたが、驚いたことに異なるクラスターに分類された。文献を精査すると、この2つの化合物はTopoII阻害剤ではあるが、作用機作が異なることが報告されている。すなわち、ICRF-193は、TopoIIの酵素活性を阻害してDNAダメージを誘導しないが、VP-16はTopoIIとDNAの複合体に作用してDNAダメージを誘導することが報告されている(図2)。以上の結果は、本2D-DIGEの解析が、薬剤の標的分子および作用機作をかなり正確に推定できることを示すものである。

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